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青いバラ

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「はい!清麿v」
「何コレ」


渡されたのは、薄紫の花束。



「バラさ!新種らしくてね、ほら青いだろ?だから清麿にプレゼントしようと思って!」

ニコニコと憎たらしいくらい笑顔を撒き散らす相手に、俺は半眼を向けた。

「…で、何で?」

バラに目線を落とす。それは確かにバラの形をしているが、見た事もない花だった。
赤でもピンクでもない。鮮やかな薄紫。
バラであることは変わらないのに、何故か全く異質な物に見えた。

「いやあ、だって清麿はバラが嫌いだろう?」

相変わらずの笑顔でそう言われるが、全く答えになってなくて。
俺はイラつきながらも自分を堪えて問い続けた。

「そう言う意味じゃなくて…なんでこんな珍しい物を…」
「清麿がバラが嫌いだからさ」

二度目の答えに、ついにキレた。思わず怒鳴ろうとする…と、それを手で制された。
一瞬の事で驚いて、何も言えなくなる。

「だからそれを選んだんだ」
「…え?」

フォルゴレの言った意味が解らなくて、俺は首を傾げた。

「私にとって、バラは象徴なんだ。…清麿に言わせれば私は浮気性で信用ないらしいから、だからバラを沢山清麿に送った。私がどれだけ本気か知って欲しかったから」
「フォルゴレ…」
「だけど、清麿はバラ嫌いだろう?」

そのおずおずと問う声に、やっとフォルゴレがいつもバラを持ってくる意味を知った。
…俺は、それにただ驚く事しか出来なかった。

「でも送らなくなったら、私の愛は伝わらなくなってしまう。だから…珍しいバラを渡そうと思ったんだ」




少しでも
この本気を信じてほしくて…




その切ない呟きに、やっとフォルゴレの本当の気持ちを見た気がした。
信じて貰いたいと頑張っていた、切ない気持ちを。

「…迷惑…だったかい?」

いつもは煩いくらいの相手が、泣きそうな声で聞いてきた。
…なんだよ、その情けない顔。


何故か、笑みが浮かんできて。



「…」


自然に口からでた言葉は




「嫌いじゃ、ない」




「え……」
全く、何て顔してんだか
大の男が情けない。
でも





「嫌いじゃないよ」




あんまり情けないから、俺は苦笑して、頬に軽いキスを送ってやった。
…何だよ、その驚いた顔。



「清…麿…」
「その…」





「珍しいバラ、ありがとう」





愛を、有難う。
そう思うより先に、俺はバラと共に抱きしめられた。










(2006/05/26)
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