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青春現在進行形

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可愛い振りしてあの子~
割とやるもんだねと~

なんて歌があった。
まあ、流行ったのは自分が生まれる前なのだが。
しかし、その節は古くとも、確実に今の清麿に当てはまっていた。
それは何故か?というのが、今回のお話。



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学校からの帰り道、人通りの少ない通学路で山中は溜息を吐いた。
「はぁ…」
「どうした?山中」
それに気付いて、一足先を進んでいた清麿が、こちらへ寄って来て、顔を下から覗く。
その瞳は、キラキラ輝いて見えて。
「い、いやその…な、何でもねェよ!」
慌てて山中は豪快に笑った。
「?そうか」
そういってすぐに背を向ける。
(つれないなぁ…)
トホホと、山中は肩を落とした。
ホントに清麿はつれない。
山中は、そんなつれない清麿にしばしば涙を流していた…。


付き合って数ヶ月。
キスもなければ甘酸っぱい話もなし。
ただ二人で帰るだけ。
それでも二人っきりならまだいい方なのだ。
多くの場合、ガッシュが付いて来る。
そうなるともう恋人同士で話し合うなんて雰囲気は無く、ただ『友達』として帰るだけ。
二人の恋人生活は、果てしなくラブラブには遠かった…。
(高嶺はそんな話しないってことはわかってるけどよぉ…)
しかし、これでは恋人の意味が無い。
現に、いま清麿は山中の前を歩いているのだし。


…恋人なら、普通は隣に並んで歩くものだろう。


といっても、どうせ聞きはしないだろうケド。
それを思うと、山中は激しく落ち込みたくなるのだった。
「なぁ高嶺~」
「なんだ?」
「折角二人っきりなんだから並んで歩いてもいいんじゃねェ?」
そう情けない声で言うと、清麿は憮然とした顔で言葉を返す。
「どうして?」
「どうしてって…恋人同士だろ~?俺ら~」
あんまりな答えに涙が出てきた。
肩を落として落ち込む山中を見て、清麿は少し顔を赤らめる。
「そりゃそうだけど…。」
「だったら恋人がすること位してもいいんじゃねー?」
愚痴のようにそう断言すると、清麿は少々悩む素振りを見せて、それから山中の隣へ並んだ。
「でも、これって恋人じゃなくてもするよな」
「うっ…」
再び顔を覗きこんで、山中の顔を見つめてくる清麿。
凶悪なまでに、可愛らしい。
少なくとも山中にはそうとしか思えないワケで。
徐々に顔の熱が上がっていくのを感じながら、山中は不自然に口をもごもごと動かす。
「恋人同士って…どんなことするんだっけ?」
そう、無邪気な目で問いかけてくる清麿。
その煌めく蟲惑的な瞳は、山中の心臓を動かし続けて堪らない。
清麿のそんな瞳を見てて、山中の心の中には幾つも『恋人同士』の行為が思い浮かぶ。
…勿論、思春期であるからして、卑猥な想像も致し方無いワケで。
(た、たたた高嶺と………)
思わず目が空を探るが、あまりにはっきり想像できてしまって、もう気を逸らす事も出来ない。
それに、現に今、その大好きな恋人は傍にいるわけだし。
何をして欲しいのか訊いて来てる訳だし。
想像してしまうのは、男の性なワケで。
「山中ー?」
「……はっ…!!」
目の前で手を振られて、山中はようやく我に帰った。
そうして、一気に熱が醒める。

(お、俺は高嶺の目の前でなんつーやらしい事をォオオオ!!)

山中は心の中で大号泣した。
清麿は、そんな卑猥な事を好むような人ではないのだ。
どちらかというとそれを軽蔑する派である。
なのに、自分は当の本人を目の前にして、あんなことやこんなことを想像してしまった…。
(俺は男として最低だぁああー!!)
そう心の中で叫んで、頭を抱えて悶える山中。
「……な、なにしてんだよ…道の真ん中で…」
これには流石の清麿も引いた。(そりゃそうだろう)
少しずつ後ろへと下がっていく清麿を見て、山中は慌てて立ち上がり、平常を装う。
勿論、心の中はまだ混乱していたが。
「い、いや、何でもねーぞ!」
冷や汗をだらだら流し、慌てて否定する山中に、清麿はまだ訝しげな眼を向けていた。
が、やがてまた隣へと来てくれた。
「で、恋人てのは何をすればいいんだ?」
先程と変わらず、何の警戒心も抱かずに訊いて来る清麿。
ここまで無邪気だと、逆に自分が情けなくなる。
山中は不埒な己を恥じると、きちんとした答えを考えた。
「それはな」
「うん」

「そ、その……手を繋いだりする事だ!!」

恋人といえば、基本はこれ。
どのラブラブカップルも行う、究極の基本だ。
少なくとも山中には、それぐらいしか禁欲的なことは思い浮かばなかった。
清麿は、あまりそういう俗物的なものは好まない。
だから精一杯考えた上での、答えだったのだが。
清麿のそれを聞いた第一声はというと。


「……ふーん」


「え、あ……駄目?」
これでもまだ俗物的?!
的を外したか。
ショックに顔を青ざめさせる山中。
出た声は、とても情け無い。
「んー…」
そんな山中の気持ちを知ってか知らずか、清麿は山中の前に回りこんだ。
別段、呆れても、怒ってもいないようだ。
意外な反応に、山中は眼を瞬かせた。
「た、高嶺?」
呼ばわる声に誘われるように、清麿は山中に近づく。
後一歩踏み出せば、体がくっつきそうなくらい近くに。
そうして、清麿はまた山中を見た。
先程とは違って、妖しげな瞳。
思わず魅入られたように言葉が出なくなった山中に、清麿は微笑んで…




軽いキスをした。




「……………………え?」
思わず、思考停止。
そして、一気に顔の熱が上昇した。
「…。」
「た、た、たたたたた高嶺?!」
舌が回らなくて、なかなか呼べない相手の名前をやっと紡ぐと、当の本人は少し離れたところを歩いていた。
そして、くるりと振り返る。
「てっきりもっと変な事言ってくるかと思ってたんだが。ちょっと期待はずれかな」
「え…え?!」
意外すぎるその言葉に、もう驚きの言葉しか出ない。
そんな山中を見やって、清麿は、

これ以上無いくらいに、綺麗な笑顔で微笑んだ。



「これくらいで驚くなんて、山中ッたらかーわいー♪」



そうからかって、清麿は駆け出した。
「えッ、あ!ちょ、ちょっとおい!!高嶺!!待ってくれよー!!」
「言っとくけどもうしてやんねーからなー!」
子供のように無邪気に囃し立てる清麿を追いかけて、山中はいまだ冷め切らない赤い頬を叩き、呟いた。


「か、可愛い振りして…」


本当に割とやる。
少なくとも、自分よりかはずっと。
「た、高嶺…お前って…実は、一寸子悪魔?」
山中は自分の浅さに落ち込みながらも、とりあえず逃げていく恋人を追いかけたのだった…。








因みに、この後山中がもう一度キスを注文をしたら、グーパンチをお見舞いされたのは言うまでも無い。
ホントに割りとやるもんだ。(何がよ











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