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緑玉の瞳に何が映っているのかなんて、良くは解らない。


「デュフォー……何してるんだ?」
行く当ても無いので野山に散策に来た清麿とデュフォー。暫し野山の生態系について語り合ったり、観察して楽しんでいたのだが。
突然、デュフォーが屈んだまま動かなくなってしまった。
何かをしているようだが、コチラからは見えない。
清麿は先程の言葉をもう一度口にすると、デュフォーの前へ回りこんだ。
と、思ったら。
「……」
すぐに体を反転させられて、失敗に終った。
「……?」
デュフォーがこんな態度になると、もう何を言っても無駄なので、仕方ないから終るまで待つことにする。
(全く……何考えてんのか解んないんだよなぁ……)
腕が頻繁に動いている。何かをしているのだろうが、全く持って彼の意図が解らない。
腕を組んでデュフォーの背中を虚しく見つめながら、清麿は眉を寄せた。
――無口で、あまり感情を表に出せないデュフォー。
彼が彼なりに意思を表わしているのは、解っている。彼が自分に最大限の気持ちを寄せてくれるのも知っているつもりだ。
けれども結局の所、相手が何を考えて、何を欲して、何を望んでいるのかなんて、解らなくて。
思っている相手なのに、それは思いが通じていないように思えて。
(……俺、まだデュフォーのこと、解ってやれてないのかな)
無表情な横顔が時折見えるたびに、胸の痛みは鋭くなった。
けれども、
「……できた」
そう呟いて立ち上がった相手。
デュフォーのその手に乗せられたそれに、痛みは驚きに取って代わった。
「それ……」
目を丸くして見やる手には、
シロツメクサで作られた、小さなブーケが収められていた。
「………」
デュフォーはそのまま、清麿の手を開いて、それをそっと渡す。
「デュフォー……これ」
未だに驚きから抜け出せない清麿に、デュフォーは顔を上げた。
「………俺は……あまり、お前にいい顔をしてやれない。…満面で笑うこともまだ出来ないし、お前をあまり喜ばせる事も出来ない」
「……」
「でも。好きなのは、変わらない。……お前が俺をどう思っても、俺はお前を思い続けるから」
だから
「………俺は、お前とずっと一緒に居て、いいだろうか?」

「………」

何故かおかしくなって、口元が緩んだ。
「……何故笑う」
「だって、……なんか……っ」
歪む顔を必死で叱咤しながら、清麿はそのブーケを潰さないように、握り締めた。
小さく、それでも己を誇示するかのように咲き誇った花弁が、優しく指に触れる。それにも笑いが止まらなくなった。
「お前も、同じなんだな、って思ってさ」
小さく拙い、それでも思いを詰め込んだ優しいブーケ。
その思いが流れ込んでくるようで、嬉しくてたまらなかった。
(そうか……同じなんだよな)
デュフォーだって、清麿の心は解らない。
不安になったりもするし、こうして確かめたくなったりもするのだ。
自分と、同じように。
「……デュフォー」
「ん?」
未だ笑いが取れない顔で、清麿は相手の手を取り、小指と小指を組ませた。
「清麿……」
「約束する。ずっと、一緒に居るよ。」
「………」
普段なら、こんな恥ずかしい事はしない。
けれどもデュフォーがこうやって、自分に己の気持ちを示してくれたから。
(……これっきりだからな)
そう思いつつ、組んだ小指を軽く振って約束した事を改めて表わす。
その指を物珍しげに眺めていたデュフォーだったが、少しだけ、その口を優しげに歪めてなすがままにさせた。
「……じゃあ、一生、一緒だ」
「……まさか、トイレとか風呂にも付いて来るとか言わねーよな」
「無論」
「冗談……勘弁してくれ」
そういいつつも、顔は笑う二人。
不思議とその指は、離れる事は無かった。


相手に瞳に何が映っているのかなんて、解る筈が無い。
だから、確かめるのだ。
互いに互いが大事だと。
(皆同じなんだよな。……俺も、デュフォーも。)
そう。同じ。

相手の瞳に何が映っているのかなど解らないから、こうして、手を繋いでいられるのかもしれない。

清麿は考えを変えて、微笑みながらシロツメクサにそっと口付けた。
約束を受け入れるように。










(2006/12/05)


シロツメクサの花言葉
「感化・約束」
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