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「清麿、これは何なのだ?」

指をさし首を傾げるガッシュ。その彼の先にある物に、清麿は目を瞬かせた。
「……コタツ」
呟いた後で、台所の方から華の声がする。
「もう寒くなるから、つけてもいい頃じゃないかと思って。いいでしょ」
嬉しそうな声からすると、自分の母親はコタツをいつ出そうかと張り切っていたらしい。
そんなに嬉しいか、と疑問に思いつつ、足に張り付いて、未だに疑問を含んだ眼差しでこちらを見るガッシュに目を向けた。
「何故テーブルにおふとんを挟んでおるのだ?あれは行儀悪いと思うのだが」
子供にしては尤もな意見だ。
イギリスではこんな物など見た事ないだろうし、その上大人に教えられた礼儀をしっかり覚えているガッシュにとっては、余程珍妙で無作法に見えるのだろう。
所変われば何とやらだ、と思いつつ、清麿は苦にも思わず説明してやった。
「あれは、ああでないといけねぇんだよ。……まあ、入ってみれば解る。お袋、電気はついてるのか?」
「ええ。きちんと入れてるわよ」
どこと無く笑いを含んだ返答に頷くと、清麿はガッシュに足を入れてみるように促した。
「ウヌゥ……何だかへんだのう」
きちんと正座をしながら、コタツ布団をめくって、ガッシュは恐る恐る足を入れる。
そんな光景がおかしくて、少しばかり笑いながら、清麿も慣れた様子でコタツへ足を入れた。
途端に足を包む、暖かい温度。
「おおっ…暖かいのだ!!」
「そういうこと。冬は寒いから、コタツを出すんだ。布団が挟んであるのは、色々理由があるが、まずは熱を逃さないため。そして、外からの冷気を入れさせない為の物なんだ」
柔らかな布団に暫し目を細めて、清麿は「解ったか?」とガッシュに言う。
ガッシュはすぐさま納得し、コタツを気に入ったようで、布団に頬を寄せていた。
「暖かいし、こたつぶとんが気持ちいいのだ!清麿、コタツとは良い物だのう!」
「そうだな」
無邪気に笑ってはしゃぐ相手に、思わず笑みが零れた。
「……」
「?」
それをみて、と言うか、清麿を見て、ガッシュはしばし動きを止めた。
何故なのか解らずに清麿が首を傾げていると、ガッシュはニッと笑って、いきなりコタツの中へもぐりこんだ。
「おいっ、気分が悪くな……」
突然の行動に驚き、慌てて引きずり出そうとしたが
「おわっ!?」
足に突然の衝撃が訪れて、それは計画で終った。
何事かと己を見てみると…。
コタツ布団が異様に膨らんでいた。
「……」
言葉を言う暇も無く、元凶が顔を出す。
「ぷはっ、コタツの中はちょっと熱いのだ」
少しばかり頬を紅潮させた元凶、もといガッシュは、そう言いながらちゃっかりと清麿の胡坐の上へ居座ってしまった。
「…………お前、何がしたかったんだ」
膝の上に乗りたいなら、乗りたいと言えばいいのに。
呆れ顔で問うと、ガッシュは満面の笑みで清麿に答えた。
「探検なのだっ!それに、こうやって移動すると寒く無いから便利なのだ。コタツは本当に良い物だのう」
上がり調子で楽しげなガッシュの口調。
怒ろうか呆れようかどうしようかと思って、清麿は苦笑した。
まあ、よしとしよう。
少なくともこの王様は、自分の膝の上でコタツを充分に堪能しているようだし。
(ま、初めての物だし、今回は大目に見てやるか)
コタツには人を朗らかにする効果もあるらしい。
清麿は個人的にそう結論付けて、自分とガッシュの二人分の蜜柑を手に取るのだった。







(2006/12/07)
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