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サイトでの小話の収納場所です。企画と平行してUPしていきます。
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「な……なんなのだ?清麿……さっきから人の顔をジロジロと……」

珍しく、「珍しく」執務をこなしているガッシュの顔を、先程から恋人がじっと見つめて来る。
相手は既に業務を終らせていて、肩身が狭いことこの上ないが、それをどうでもいいと思えるくらい、その瞳でコチラを見つめてくるのである。
これには流石のガッシュも参ってしまっていて。
恐る恐る聞いてみると、少しばかり不思議そうな顔をした清麿の純粋な答えが返った。
「いや、お前あんまり角出さないよなぁ…と思って」
ヌ、と声を上げて目線を正確に辿ってみれば、その目は確かに自分の頭に向けられていた。……ホッとしたような寂しいような。
ガッシュは普通の人間と変わらない頭をボリボリとかいて、ペンを再び手に持った。
「ヌゥ……まあ、その。気分の問題かのう。出していても問題は無いし、引っ込めていても何も弊害は無いのでのう」
要するに、自分の生きてきた時間を表わす年輪のような役割なのだ。
自分が「王」と示す以外では、出していても何にも得な事は無いので、引っ込めていた方が楽なのであった。
「ふーん…………なあ、ガッシュ、ちょっとツノ出してくれよ」
「ウヌゥ?構わぬが…」
愛しくて堪らない恋人の為に、一つ返事で隠していた物を出現させる。
木が急激な成長を遂げるように、角は元の姿へと戻り、ガッシュの頭を飾った。
幾重にも分かれて光るその角は、さながら龍の角だ。コレだけで威厳というモノが生まれるという事に、ガッシュは常々不満を抱いていた。……何故なら、この角を出した時にしか皆が「王様」と呼んでくれないからだ。
(……私はそんなに威厳がないのかの)
自分でもあるとは思わないが、こうも態度が違うと悲しくなってくる。
「おお……」
そんなガッシュの気持ちにも気付かず、清麿は好奇心に目を輝かせて、近寄ってきた。
(ヌ、ヌォ!?なんと……)
その顔は子供のように純粋な、なんとも可愛らしい表情で。
思わずにやけそうになる顔を必死に叱咤して、なんとか平静を装ったまま執務を続けた。ここでへたれると、台無しだ。
「へぇ……近くで見た事無かったけど、けっこう滑らかな角なんだな」
そんなガッシュに気付かない清麿は、純粋に目を輝かせながらまじまじと角を観察した。己との身長差が開き始めた今となっては、ガッシュが座っている時にしか頭部は見れないのである。
その事に何となく嬉しさを感じて、ガッシュはまた顔を引き締めた。
(だらしない顔をすると、すぐ清麿は怒るからのう……ここでだらけたら折角の清麿とのツーショットが台無しになってしまうのだ)
清麿の顔をじっと見ていたいのは山々だが、そうするとまた怒られるので、仕方なくガッシュはペンを走らせた。
しかし、ツノを見せるだけでこうも態度が違うとは。
こうなったら、常時威厳を現しておくのも悪くは無い。ガッシュは少しは王様らしくなっている自分を思い浮かべて、口尻を吊り上げた。
「良く見た事なんてなかったからな……なあ、触っても痛かったりする事って無いか?」
「触ってよいぞ。他の動物と変わりないのだ。普通に触っても何も感じぬぞ」
遠まわしな「触っていいか?」という問いに、ガッシュは許可してやる。
痛覚が無い云々は兎も角、清麿が触ってくれるのはうれしかった。
というか、清麿が近付いてくれたらそれだけで嬉しい。
(コレが夜で寝台の上だったら……ウヌゥ。最近ご無沙汰だしのう)
「……わ、なんか冷たいな。金属みたいだ……。やっぱり魔界の者だから色々と違うのかな…」
ぺたぺたと遠慮なく触っては、清麿は小難しそうなうめきを漏らす。どうやら思考はすっかり探求者になってしまったようで。
これでは甘い雰囲気など望める筈も無いか、とガッシュは眉を情けなく顰めた。
「らぶらぶは果てしなく遠いのう…」
涙をだぱだぱと流しながらの執務は、なんとも切ないものだ。しかし清麿はこっちの気持ちなんぞ汲んじゃくれないワケで。
好奇心に可愛らしく目を煌めかせたまま、角を触っていた。
「鋼鉄……黄金……うーん、何に近いだろうか。でも人体からの、や、待てよ?魔物なんだし……」
その滑らかな手が、角を優しく擦る。
(……)
……何ともこそばゆい感触が駆け抜けたのは、気のせいだろうか。
己が内の感覚に少しばかり疑問を感じ、ガッシュは内心で首を傾げた。
「皮膚でも無いし……うーん。」
やはり乱暴に触るといけないと思っているのか、清麿のその手つきはとても優しくて。
というか、優しすぎて……。
(な……なんか変な気分なのだ…)
どうも、身体が変に疼く。
これはくすぐったいと言うよりかは……。
(こう……この……なんと言うか…下の方が……)
「なあガッシュ、痛覚とかは無いんだよな」
「ウヌ……」
しかし何故
清麿に角を優しく撫でられる度に。
(こ……こうウズウズするのだぁあああ!?)
「やっぱまだまだ不思議だよな……魔界って」
物珍しげに擦る清麿。
その妙なる感覚を、既にガッシュはある感覚だと確信していた。

(な……何故……何故、たかがツノに……快感を感じる神経が通っておるのだぁあああ)

これでは蛇の生殺しも当然である。
まさかそんな物があるなんて知らなかった。大体飾りのはずの角に、そんな神経があること自体おかしい。
これならば痛覚がある方がまだマシだった。
しかも、触れているのは誰でも無い、清麿なワケで……。
(うぬぉおおお……何故……何故こういう時にばかり素直で可愛らしいのだ清麿~~!!)
楽しそうに調べるその無邪気な笑顔が、今は憎らしい。
「なあガッシュ、お前のツノって結構気持ちいい感触してんだな。象牙みたい」
そんなガッシュを嘲笑うかのように、笑顔でツノを触りまくる清麿。
ああ、もう、我慢出来ない。
パンクしてしまう。
今すぐにでも清麿を抱いて、愛したい。
でも我慢しないと清麿は怒るだろうし、口も聞いてくれなくなるだろうし。
大体今は昼間だから、周りには人がいるし。
(ヌォオオオ!!誰かっ……誰かこの時間を早回ししてくれなのだぁああああ)
「石みたいだから大理石でもいいかな。ツルツルして、ツノじゃないみたいだ」
楽しそうな声がまた、欲を煽る。


(ツノの……ツノの大馬鹿者ーーーーッ!!)


ガッシュは心の中で、全世界に響き渡るような叫びを上げたのだった。





それ以来、ガッシュは城の者に「王様」と呼ばれなくてもいいと、決心したそうな。








(2006/12/12)
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