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白い布の海に沈む肢体。頭の上で片手に容易く止められた腕。睨みつける双眸の向かう先には、金色の光をしみこませた御髪の魔王。
「どうしたのだ? 清麿」
含み笑いを込めながらコチラを窺う相手に、ただ眉間の皺は増えた。
歯で恨めしく音を挽きつつ、清麿は機嫌の悪い声で吐き捨てる。
「なんでこんな事をするんだ。ガッシュ」
乱れた儀礼服は、まだ頑なに清麿の肌を隠していて。それを興ざめの目で見ながら、ガッシュは未だに笑みを湛えた顔で返した。
「答えろ」
再度命令のように告げるが、相手は訊く耳も持とうとしない。そのまま、慣れた手つきで服の袷を酷くゆっくりと解して行く。
その手の行き着く先を知っているが故の動悸が、清麿を焦らせた。
望んではいない事を、今、この寝台の上で合意もなしに決行されてしまう。
それだけは、決して許せる事ではない。
だが、清麿の強い口調の問いに、ガッシュは答えない。
それ所か、顔を紅潮させ始め、悔しそうに歯を合わせる清麿を見て、更に呟いた。
「恥しいかのう」
どこか楽しげで、こちらの不幸を楽しんでいるようにも見える、ガッシュの言葉。
それを聞いて、清麿は顔をゆがめた。
「ッ…の……クソ野郎……!」
自尊心を気付けられるほどの、屈辱。
元々己のなすべき事ではない役割を負っている清麿には、組敷かれることさえも苦痛になっていた。
けれど、ガッシュはそれをやめようともしない。
それ所か、毎晩毎晩、その屈辱を味わわせようとでも言うかのように、清麿を冒していく。
子供の頃の素直さなどどこにも無く、ただ、清麿を冷たい目で求め続けていた。
「酷いことを言うのう」
「言えた……義理か……!」
もがく腕はピクリともしない。
肌は徐々に外気に触れていく。
狂いそうなほどの羞恥を味わいながら、見つめることしか出来ない自分。
悔しさで、涙が溢れて止まらなかった。
「清麿、お主が悪いのだぞ? お主がいつもいつも私以外の者と会うから、いけぬのだ。私の言いつけを守らず、他の者と話すからいけないのだ」
そんなの、お前の勝手な言い分だ。
理由などいつもこんなどうしようもないもので、結局はこの状況へと持ち込む口実に過ぎない。そうでしかないのだろう。
そう言いたくても、口が震えて強い言葉が出せない。
ただ紡げたのは、弱々しい、小さな言葉だった。

「何で……こうなっちまったんだよ……」

言葉が空に溶けたのと同時に、溢れ雫となって落ちる涙。
睨む気力も無いその瞳を見つめて、ガッシュは優しい笑顔で、告げた。
「お主が、私の傍に居るから、いけぬのだ」
その斜陽を写した瞳には、暗澹とした夜が浮かんでいる。
既に、太陽の光は落ちていた。
……どうしてこうなってしまったのか。
考えても、清麿にはもう答えを出す力などなくなっていた。
(どうして……どうして、俺は……ガッシュをこんな風にしちまったんだ……?)
その思いを噛締めるも、広がるのは後悔と悲しみで。
「清麿……その顔も、愛らしいのう」
口付けるその唇は、ただ熱く、痛い。
(俺達は……どこで道を間違えた?)
昔覚えていたあの思いは消え去り、魔王は魔王たる心に。王佐は、ただただ貪られる存在になってしまった。
この関係に愛などあるのだろうか。
考えても、答えは悲しいものしか出ない。
解っているのは、ただ、自分はガッシュに支配されていると言うことだけだった。
(ガッシュ……)
遠くに浮かぶのは、眩いばかりの笑顔で笑っていた、愛しい者。今はもう、存在しない存在。
けれど、求めることは止められなかった。
「これからもずっと…………お主は、私だけを見ておればいい」
首筋に刻む所有の証。
熱と少しだけの痛みを持ったそれを感じて、清麿は目を瞑るしかなかった。









(2007/04/06)
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