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花園の花は、枯れない。
それは魔力で命を延ばされ、枯れてもすぐに摘み取られてしまうからだ。


「…フン」
ゼオンは花園を見やって、鼻を鳴らした。
―命を無理に伸ばし綺麗なままで残すなど、悪趣味以外のなんでもない。
命は限りある事で命と言えるのに。

そう半眼で思いながら、ゼオンは城へ続く平坦な道を見た。

「ん…?」

木陰にしゃがむ姿が一つ。その雰囲気から察して、ゼオンは口元を緩めた。
「清麿、どうした」
「ゼオン」
そう言って笑む顔は、昔に仰いだ笑顔と寸分違わぬ顔。
まるで時が止められたような…



(そうか…清麿もそうだったな)



王が決定した時から、清麿は時間を、命を止められた。それは王の魂を半分宿す清麿を死なせないため。…そんな強引な魔物の掟によって、清麿は王の為、人間としての全てを奪われてしまったのだ。


(……)
「ゼオン見てくれよ」
清麿は笑いながら地面を指差す。
何事かとゼオンは下を見て、目を瞬かせた。
「これは……野草の花…」
「綺麗だろ?」
「だが花園の花より地味だな」
率直な感想を述べると、清麿は眉をしかめた。
「お前感動薄いなー」
「…と言われても」元々感情の起伏がないゼオンなのだ。
感情を揺さぶれと言われても無理難題だった。
それを思い出したのか、清麿はすまなそうにすると、野草に触れた。
「…ほら、ここってこんな花咲かないだろ?地味で、小さくて、珍しい」
「……」
ゼオンは、清麿の寂しげな瞳を見て、苦い顔をした。


「…なんかさ、似てるなって」




その悲しみを含んだ声が、何よりも胸を突き刺した。


――どうして…どうして命を他者に奪われたお前が苦しまねばならんのだ…


ゼオンは歪みそうになる顔を抑えながら、野草をみた。
「ゼオン…?」
清麿の問い掛けに答えず、ゼオンは野草に手を翳した。
そうして、何事か呟く。

「何を…」
「……」

清麿の問いに、ゼオンは立ち上がった。

「…守りの術をかけた。…これでいいだろう」

その言葉に清麿は一瞬驚いて…



華やかに笑った。



「…ありがとう」
「フン」



その笑顔を横目で見ながら、ゼオンは少しだけ、笑みを漏らしたのだった。





君が苦しまないなら
君が笑ってられるなら
私はそれを防ぐ盾となろう
だから悲しまないで

例え君の「大切」になれなくとも構わない



一生守るから



だから
笑っていて







(2006/05/21)
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