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アルカトラズ

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この世に、抜け出せない監獄なんてあるのだろうか。




「宰相殿、この暗殺者は如何いたしますか」

臣下に問われ、清麿は跪く臣下の隣にある物体を見た。
その物体は…縄をかけられ、見るも無惨な返り討ちにあった反逆者。

「っ…お前、人間だな!!おい人間、お前も利用されてるだけだ!解ってるんだろ!?だったら今すぐ魔王を討て!!解放を……っ!!」

上げた顔に、何故か見覚えがあった。誰に似ているのか。そう考えて、リオウを思い出した。

(そうか…こいつはリオウの一族の…)

戦いが終わってから、彼ら一族は深く暗い谷へ追放されたと聞いている。
多分、彼はそれを良しとせず、ここへ乗り込んで来たのだろう。
臣下に一撃を受け、気を失った反逆者に、清麿はその瞳を揺らめかせた。


感情のない、虚ろな瞳を。



「…牢獄へ。反逆者は生かしていてはいけない。後日極秘に処刑するように」
「はっ!」

清麿の無慈悲な判決に臣下は当然の如く頷くと、気を失った反逆者を連れて行った。

「……ふぅ…」

疲れた溜息を吐いて、清麿は椅子に腰掛けた。その姿は、まるで過酷な労働を強いられたように疲れを醸し出していた。

「…利用されてる……か」

呟いて、自嘲気味に笑う。

「……解ってるよ」

反逆者に答えを返して、清麿は両手で双眼を覆った。




解っていた。
自分が魔王を[良いように]操るために、操られている事も、魔王をこの城へ縛り付けるために生かされていることも。




「でも、討つなんて…出来ねぇよ」




魔王を殺す
確かに自分には簡単な事だろう。
だけど


「出来ねぇんだよ……」


流れる涙は、自分の弱さへの悔しさと…彼への愛しさ故。





確かに魔王を殺せば自分は自由になれる。死んで楽にもなれる。でも
それは出来なかった。いや、出来る筈がなかった。
何故なら…




彼を愛しているから




彼がいたから、自分は今まで耐えて来られた。彼がいたから自分はこんなに冷酷にもなった。
苦しんだり、泣いたり、だけど笑う事も出来たのだ






この、牢獄のような城の中で…






「ガッシュ…」



例え鍵がそこに有ろうとも
決して抜け出せはしない



「殺すくらいなら……ガッシュがいなくなるくらいなら……」






この牢獄から抜け出せなくてもいい






溢れる涙に、その慟哭にも似た呟きは消された。









(2006/05/25)
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