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その一言が言えないんだと言えない

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もう何十年になるだろうか

清麿が時を止められてから



清麿は、そうなってからはあまり人間の時の思い出を話そうとしなくなった。

ただ、今の日を生き、時には私に笑い、いつも怒る。



変わらない、あの日の顔で。



私は変わった。
背も飛躍的に伸び、頭も成長し、清麿の年を追い越した。

国の隅々までを知り、民の声を聞けるまでになった。

今では清麿に誉められる事も格段に増えたのだ。




お前はもう
一人前だな




それを言われる度、私は心臓が凍り付きそうになった。


一人前?
いや、まだまだなのだ。私は清麿がいないと何も出来ないのだからのぅ


そう言って、清麿の嬉しそうな台詞を掻き消すが、鼓動は収まらなかった。





なぜか



それはとうに解っていたのだ。



私が一人前に…
本当の『王』になってしまえば…


清麿は
私の魂を完璧にするために







消されてしまうのだ





イヤだ
イヤなのだ。

清麿がいないくなったら、私はこれからどうすればいいのだ?
どう笑えばいいのだ?


どう……この世界を生きていけばいいのだ……








清麿、お主が本当は苦しんでいる事を解っている
その時を止められた姿が、どんなに苦痛か解っている。
過ぎ去った日々に、どんなに回帰したいかも…解っている





だけど



だけど、その苦しみから解放する事は、したくない
いや、しない。


だって、許してしまえば
許してしまったら





私は
愛するお主を
失ってしまうのだから…








お前はもう
一人前だな







だから、私は決して、完璧にはならない
清麿を苦しめても、清麿を悲しませても、清麿を失ったりはしない
ワザとバカをして、誰にも気付かせたりはしない


…どんなに愚かなのかは、自分が一番しっている。






だから
言わない








お前はもう
一人前だな









その言葉へ返す
肯定の一言を











(2006/05/22)
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