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暗い淵

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満月の夜、誰もいない図書館に





「…誰かいるのか?」

古く大きな扉を開け、ゼオンは中を伺った。中はもう灯りも無く薄暗い。光源が有るとすれば幾つもの窓から差し込む月光だけだった。
高い天井に付かんとする本棚にぎっしりと詰められた本は、その光に緩く照らされている。机も、椅子も、そして…人も。

(…ここにいたのか)

ゼオンはその人影を見て、安堵の溜息を漏らした。
人影は机に伏して、安らかに寝息を立てている。…多分、蔵書を調べている内に疲れてしまったのだろう。
ゼオンは滅多に浮かべる事のない微笑を浮かべ、影…清麿に近づいた。

(全く…あのバカのおかげで大変だな)

我が身と同じ境遇に思わず苦笑が滲む。子供のようなあどけない寝顔は、愛しさを募らせた。

(こんな所で寝て、風邪を引いても知らんぞ…)

そう呟くが、口は緩んでいて。
仕方がないから寝室まで連れて行ってやろうとして……散らかされた本の内容が目に入った。

「…!!」

それは



『宰相の歴史』




「禁書が何故清麿の手に……!!」

有り得ない事態に、体が凍り付いた。




この禁書は図書館の奥に封じられた
『見てはいけない本』
知られてはいけない歴史書なのだ



特に
…宰相には





「まさか……気付き始めて…いるのか」



自分が
どうなるのかを



その瞳を閉じた瞼の奥に、清麿は何をみたのだろうか。
絶望か、疑問か…
運命か。

「…」

自分の宿命を知って、清麿はどう思っただろうか
清麿は…どうするつもりなのか……





「……どちらでも、構いはしない…か」




ゼオンは愛しいものを見て、呟いた。
月光を浴び、その紫水晶の瞳を閃かせて。



その瞳は
目の前の者しか、映っていなかった



「清麿……」



切なげに囁いて、ゼオンは涙の後の残る頬に、そっと口付けた。



「…俺は…誓ったんだ」








全てを敵に回しても
お前を
守る盾になると







「お前が死なないためなら、俺は何でもする」






そう。例え
ガッシュを殺してでも






そのつぶやきだけを残して、ゼオンは禁書だけを持ち去った。







満月の夜誰もいない図書館に


人ならぬ人と
約束





そして、




涙だけが残された。










(2006/05/27)
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