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狂気

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「お前、分かっていたな」


それが、ゼオンの第一声だった。


「何を、なのだ?」

ガッシュはゆったりと椅子に腰掛け、ゼオンを金の双眸で見やった。その顔には大人びた微笑を浮かべ、静かに頬杖をついている。
その表情は、清麿がいたら見られなかった表情だった。

「決まっている」

その顔を睨み付けながら、ゼオンは吐き捨てた。

「清麿が禁書を見つけるという事をだ」

ゼオンの言葉に目を細め、ガッシュは暫し沈黙を保った。
そして、何を思ったかいきなり笑い出した。

「ハハハハ!面白い事を言うの、お主。何故私がわざわざ清麿を突き落とすような事をしなければいけないのだ?」

冗談を言うな、と笑うガッシュ。…だが、その目は笑っていない。
ゼオンはそんなガッシュを見て、柳眉をしかめた。

…こんなガッシュは今まで見たことがなかった。

清麿といる時のガッシュは、昔と変わらなかった。民や臣下と接する時は、威光と尊厳のある良き王その物だった。




けれど今は
…まるで、狂人。




「…お前は、何がしたいんだ」

耐えきれず静かに問うと、ガッシュはピタリと笑うのを止めた。
金の瞳が病的なまでの暗闇を灯す。
その表情は、今まで見てきたどの顔とも違っていた。
そう、例えるなら




悪魔の微笑





「何がしたい、と?」

見開いた目は狂気。口は何にとも知れぬ笑いに歪んでいた。

「私は何も考えておらぬ」
「嘘だ」

ガッシュの言葉を切り捨てて、ゼオンは冷たい瞳で自分の王を見やった。

「お前は、清麿を縛り付けたいんだろう?」
「ならどうしてワザと清麿に禁書などを見せたのかのぅ」

のらりくらりと逃れるガッシュに、ゼオンはついに柳眉を逆立てた。

「決まっている!!負の感情でさえも、自分が支配したかっただけだ!!」

滅多に現れはしないゼオンの激情。
ガッシュはスッと無表情な顔になった。
そして、感情の見えない声で台詞を吐いた。

「だったら?」
「……!!?」

目を見開くゼオンに、ガッシュは冷たい声で続けた。

「だったらどうだというのだ。お主には何も関係ない。…そうだろう?王佐」
「…!!」

また激情の炎が揺らめくゼオンの瞳に、ガッシュは美しい微笑を向けた。






「そう。…誰にも関係ない」






ガッシュはそう言って、狂気に歪んだ微笑を閃かせた。






清麿には、決して見せない微笑を。












(2006/05/30)
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