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交歓

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信じてる。信じてるのに







「ガッ…シュ」
「ん?」

体を這う手を目で追い、シーツを緩く掴んだ。

「清麿…どうかしたのかの?」

首筋に埋めた顔を上げ、ガッシュは此方を見た。美しい橙の瞳が清麿の輪郭を映す。

「…ん……何でも…ない」

腕まで脱がされた儀礼服が重たく感じる。清麿は僅かばかり身をよじった。

「清麿、何だか今日は大人しいの」

クスクスと笑う相手に、自然と笑みが浮かんだ。
だが相変わらず体を弄る手に熱を煽られ、その笑みも次第に艶を帯びた表情に変わって行く。
笑う余裕は、もうどちらにも無かった。

「っん…ふ……ガッシュ…ぅ」
「気持ちよいか?清麿」

掠れた声で囁かれ、それだけで快楽が増した。

「清麿…」

呼ばれ、一度だけでも触れられれば、もう拒否する事は出来なかった。

「清麿…いいかの」
「んっ……訊く、な…っ…ぁっ」

裏返った声のような自分の嬌声に恥じながら、相手を受け入れた。

―少しの痛みとそれを上回る快楽。

体をひきつらせ、ただひたすらその快感に酔った。

「清麿…っ、清…まろ…!」
「ひ、ぁ!…っふ、はっ、っあぁあ!やぁあっ」

酷く揺さぶられ、浮遊感に不安が増す。
愛しい人の背に縋ろうと手を伸ばして…

…その手を、引き戻した。




「ガッ、シュ……ガッシュぅ…!!」

涙が溢れ、シーツに落ちる。
けれど、決して、その背中を抱き締める事は出来なかった。



もう、抱き締める事は…出来なかった。



「ガッシュ…!!」

呼ぶ声も掠れ、心の中で叫んだ音よりも小さく情けなくて。
ただ、快楽と悲しみの狭間で…涙するしか無かった。



(ガッシュ…お前は本当に…俺を……)





愛してくれてるのか





思わず口にしかけて、快楽で言葉を塞いだ。

(もう…考えたくない…何も、考えたくない!!)

あげる声に悲鳴のような叫びを混ぜて、清麿は固く目を閉じた。
シーツを、固く握りしめて……






解らない
もう解らないんだ
愛してるよな
お前は、俺を愛してくれてるよな?

信じてる
信じてるけど
駄目なんだ


あの本を見てしまってから



なぁ
俺は「生贄」なんかじゃないよな
ただの道具なんかじゃ…ないよな?




お願い
そう言って。





涙で濡れる視界に映る愛しい影。

けれど今は





どうしても、その姿を見る事は出来なかった。






(2006/06/01)
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