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カルマ

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「これは、決定事項だ。」


暗闇に浮かび上がった祭壇。ただ話声だけが聞こえた。

「そんな…認められません!!」

そこへ唯一はっきりとした声が響き、話声を裁断する。
…闇に浮かび上がった姿は…銀を身に纏った、王佐。

「残念ながら、取り消す事は出来ない」
「嘘だ!!取り消す事など貴方がたには簡単な筈!!」

冷静な声に反論し、紫電の瞳を怒りに閃かせる。
だが声達は、笑っただけだった。

「王佐。貴方は余程宰相が必要と見えますね」
「全くだ。人間などに情を傾けるとは」
「しかし、所詮は人。我々の餌に情を与えて何になる?」

闇から次々と聞こえては消える声に、ゼオンは激昂した。

「っ…清麿は餌などではない!!貴方がたはどうしてそうとしか考えられないんです!!」

愛す者を侮辱される事が許せなかった。自分ではないような声が出る。顔が怒りに強張る。
こんなに自分が動揺するとは思わなかった。
けれど、怒りは収まらない。

「ゼオン、貴方は理知的な王佐だと思っていましたがね」
「……っ!!」

様々な声が笑う
自分を嘲って
愛する者を…嘲って

「俺は…認めない!!」

何も出来ない自分が腹立たしい。憎らしい。
どうにもできない自分に失望しながら、ゼオンはその場を足早に去った…。



「あの者も…もう間引く時かの」



小さく呟かれた、その声も聴かずに。







「ゼオン…?」

何度も名を呼ばれた愛しい声。俯いて歩いていたゼオンは思わず顔を上げた。

「どうかしたか?」

そこにいたのは…自分が守ると誓った、最愛の人。

「清麿…」
「大丈夫か?顔色が良くない」

そう言って手で頬に優しく触れる。
心配する清麿の方こそ、顔色が優れないのに。

「何かあったのか?俺で良ければ、相談に乗るぜ?」

穏やかな笑み。心を癒やす声。
胸が、痛くなる。

「ゼオン…」
「……っ!!」




名を呼ばれて…
思わず、抱きしめてしまった。




「ゼ…ゼオン?」
「清麿…」




ああ、どうして
自分が王では無かったのだろう。

自分が王だったなら
清麿を…




「ゼオン?」
「お前は…俺が守る…必ず守る…」





誓った言葉は
悲しい程掠れていた




誓ったんだ
守ると
全てを敵に回しても…







抱きしめた体は、昔に見た大きな姿ではなく






小さく、壊れてしまいそうだった











(2006/06/03)
link for : 06/02story

   


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「また過激派が動き出したか」

「谷に追いやった一族も何やら動き始めています」

「どうやら混沌を望む者達が徒党を組み始めているようだ」

「近々大規模な暴動…いや、戦争が起こるでしょう」

「やばいな。今でこそ魔王は歴代で最も優秀な魔物であるが……」

「心が、完成していない」

「心が完成していないと、完璧な魔王ではない」

「完璧な魔王でなければ、世界を完全に統べることなど出来ない」

「やはり、後回しにしたのは失敗だったな」

「人間を今まで生かしておいたのは間違いだった」

「今からでも遅くはない」

「そうだ。戦争が起きる前に」

「起きる前に、心を…魂を完成させなければ」

「魂を完成させて、今こそ、我々の望む、史上最高の王に」
「そうだ」

「魂の完成を」
「魂の完成を」
「魂の完成を」
「魂の完成を」
「魂の完成を」



「良かろう。ならば、一刻も早く儀式を執り行わねば」






「人間を殺す儀式を」







「今こそ…
魔王を完成させるのだ」












(2006/06/03)
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