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crime

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処刑の日というのは、どうしても憂鬱なものだ。
そう。例え、見る事が出来ないとしても。

ガッシュは窓の外の不変の景色を見ながら、深い溜息をついた。

「どうした?ガッシュ」

隣で呼ぶのは、「宰相」としての仮面を取った、昔と変わらないパートナー。
ガッシュは清麿を不安にさせないように、笑って首を振った。

「いや。何でもないのだ」


そう。清麿には、関係ない。
いや…あるが、絶対に言わない。


ふっとシニカルな笑みが出そうになって、ガッシュは慌てて昔のような明るい笑顔を清麿に向けた。

「それより、清麿。明日はピクニックにでも行かぬか?」
「はぁ!?……お前…明日も仕事詰まりっぱなしだろうが!!のんきな事言ってんじゃねぇ!!」

バコンと豪快にトレイで頭を叩かれ、涙が浮かんだ。いつも清麿のおしおきは痛い。
恨めしげに清麿を見ると、清麿は笑っていた。

「ったく…ホントに子供なんだからよ」
「……」

緩い苦笑。だがその顔は温かく、呆れとは程遠い。

「のう、清麿。……明日くらいは良いではないか。……行くのだ!」
「でも……」

何故か更に行く気になったガッシュが不思議なのか、清麿は戸惑いながら眉をハの字に歪めていた。
困らせているとは解っている。
けれど、どうしても行きたくて。

「仕事なら明後日、二倍…いや、三倍やるのだ!だから、いいであろう?きよまろ~」

急かす様にそういうと、清麿はしばし熟考して……小さく、頷いた。

「…今度だけだからな」
「やったのだー!」

小さな頃のように両手を挙げ、大げさにはしゃいだ。
何も変わらないように。
何も、昔と違わないように。



(…こんなの、欺瞞なのだ)



自分で思うことは、間違っていなかった。
確かに、コレは嘘だ。
自分はもう、あの時のように純粋では無い。
あの時のように、馬鹿でもない。
あの時のように…綺麗でもない。



(だが…仕方ないのだ)



これは、清麿を護るためだ。
自分がこんなに清麿を欺くのは、清麿を護る為に他ならない。





この城は
この世界は、汚い。
全てが闇に満ちている。

自分という王を「贄」として、この世界の均衡を保とうとしている。

だが、それはいい。
自分はそれを知っていて、王になったのだから。
けれど。


けれど
清麿はどうなる?



清麿は、連れて来られただけだ。
パートナーというだけで、人生を奪われ、命さえも支配され、







自分の為に
殺される運命を背負っている。





そんな馬鹿なことがあるか。
そんなことさせてなる物か。
清麿は、たった一つの光。

(私の……たった一人の……)





「ガッシュ?」

思考を打ち切られ、ガッシュは我に返った。
顔のすぐ傍に、相手の顔がある。
昔と変わらない、純粋なままの顔。



「……なんでもないのだ。」



またニッコリと笑い、ガッシュは背伸びした。

「さて!明日の為に早めに寝るかの!」
「お前…まだ日も沈んで無いぞ?」
「備えなのだ!」

そう言うと、笑ってくれるその顔が愛しい。
その全てが、愛しい。

「清麿、行こう」

ガッシュはその笑顔に、唯一嘘ではない、本当の微笑を向けながら、遥か遠い窓の外を見た…。







(…明日、今日と同じように、大勢の謀反者が処刑される。……清麿も知らぬ、私が捕らえた謀反者達が)








それだけは、純粋な彼には見せたくない。

だから、嘘をつく。

これからも、そうやって嘘をつく。







罪だと知っていても









彼を、護るため。













(2006/06/05)
link for : 06/03story
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