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サイトでの小話の収納場所です。企画と平行してUPしていきます。
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Repro bation

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最後の希望だけは
捨てたくなかったのに







図書館へきたのは、今度で何回目だろうか。しかしそれは、今は考えるだけ無駄だった。
清麿はそんな事を思いながら、図書館に足を踏み入れた。


「はぁ…全くガッシュの奴……普通法律書を忘れるか?」

溜息を尽きながら、広い図書館を見渡しす。所狭しと並んでいる本棚には、ぎっしりと本が詰められていた。

「えーと…」

一応全ての本棚を探すが、残念ながら法律書は見つからなかった。

「ここにない…となると」

呟いて、清麿は奥を見た。
棚が折り重なって、ここから見ていても暗闇しか見えない。
実際なにがあるのかは、ここからでは解らなかった。

「確か…重要蔵書はあの奥って言ってたな」

実はあの場所までは、まだ行った事がない。そこに何が有るのかは、解らなかった。入ろうとしても、何故かいつも管理人の魔物が止めにくるのだ。
そう、いつもここには清麿を見張るようにその魔物が存在していた。

「でも、今は早く持って行ってやらなきゃな…」

その事への言い知れぬ不安と、暗闇への些かな恐怖が胸を突く。だがそんな事を思っていても、何も始まらない。
清麿は勇気を出して足を踏み出した。



何故か、管理人は見当たらなかった。







暗闇は意外に怖くはなかった。ただ同じように本棚が並び、本が詰められている。
清麿はその本棚に目当ての本がないか、調べながら更に奥に歩いていった。
しかし、あるのは歴史書ばかり。
一向に目当ての本は見つからなかった

「一体どこにあるんだ?」

再度見渡すが、やはり法律書の類は見つからなくて。
これには清麿も困ってしまった。
ここに無いなら、どこにあるのか。
気づけば、足は更に奥へと進んでいた。暗闇がどんどん濃くなっていく。

「……え?」

途端、本棚の道が終わった。
暗闇に茫洋と光る場所が、目の前に急に現れたのだ。



そこには、鎖に封じられた一つの本棚。



幾重にも張られた結界が、「入るな」と黙して命令していた。

「な…なんだよこれ……」

こんな場所があるなど、知らされていなかった。
いや
「知ることは許されなかった」…とでも言うべきだろうか

「………」

もしかして
この場所は……


「俺が知っては…いけない場所なのか?」




清麿の瞳の中で、何かが揺らめいた気がした。






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(2006/05/28)
link for : 05/27story
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手を触れても、結界は壊れなかった。
ただ、触れた所に波紋を残し、水のように平静を取り戻す。鎖までつけられたそこは、とても厳かな場所にも見えた。

「この本棚、なんでこんな厳重に…」

疑問が湧いたが、その本棚には触れる事など出来なかった。

「この鍵を外せば…」

そう言って触れる。鍵は僅かに光っただけで、開きもしなかった。

「…呪文が必要なのか?」

ある特定の鍵は呪文で開くようになっているという。確信はできないが、鍵穴が窪みにしかなっていない所からそうとしか考えられないだろう。

「確か…ガッシュが言ってたな」

前、ガッシュは真面目な顔でこう言っていた。
『良いか清麿。私達は同じ魂を持っておる。だから私だけの呪文をお主も使う事が出来るのだ』

「まさか…な」

清麿は緩く笑むと、そっと鍵に手をやった。
そして…


呪文を口にした


途端

「!!?」

鍵が光を放ち、崩れ去った。
バラバラと鎖が解け、シャボンのように幾重もの結界が軽い音を立てて弾けた。

「……」

ただ、本棚の周りだけが茫洋と光っていて。
足が、知らずに歩みだしていた。

本棚には、数冊の本。中には清麿が読めない文字を刻んだ本が並んでいる。


「…あれ?」

その中に、一冊だけ理解出来る本があった。


その題名は







『宰相の歴史書』






「…!!」

清麿はその本を取ると、急いで机に本を叩きつけた。ばらりとページを開いて、最初の頁に目をやる。額にいやな汗が伝った。

そこに記されていたのは






『魔王の為に連れ去られ
利用され
魂を奪われた

哀れな人間達の歴史を記す』







「そ…んな」



その言葉が
胸に突き刺さった






やはり自分は魔王のために生かされていた
使われていた
ただの



「贄」







「そんな…」



嘘だって言ってくれ

利用するために連れてきたのではないと
殺すために生かされているのではないと
お願いだから
そう言ってくれ




「ガッシュ…」




けれど
それが きっと
揺るがない真実。







目の前が真っ暗になる
涙が頬を幾重にも伝った。





もう、希望の光さえも見えなくなっていた。
そう、愛しい人の顔さえも






「ガッシュ…!!」








最後の希望だけは
捨てたくなかったのに












(2006/05/29)
link for : 05/28story

狂気

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「お前、分かっていたな」


それが、ゼオンの第一声だった。


「何を、なのだ?」

ガッシュはゆったりと椅子に腰掛け、ゼオンを金の双眸で見やった。その顔には大人びた微笑を浮かべ、静かに頬杖をついている。
その表情は、清麿がいたら見られなかった表情だった。

「決まっている」

その顔を睨み付けながら、ゼオンは吐き捨てた。

「清麿が禁書を見つけるという事をだ」

ゼオンの言葉に目を細め、ガッシュは暫し沈黙を保った。
そして、何を思ったかいきなり笑い出した。

「ハハハハ!面白い事を言うの、お主。何故私がわざわざ清麿を突き落とすような事をしなければいけないのだ?」

冗談を言うな、と笑うガッシュ。…だが、その目は笑っていない。
ゼオンはそんなガッシュを見て、柳眉をしかめた。

…こんなガッシュは今まで見たことがなかった。

清麿といる時のガッシュは、昔と変わらなかった。民や臣下と接する時は、威光と尊厳のある良き王その物だった。




けれど今は
…まるで、狂人。




「…お前は、何がしたいんだ」

耐えきれず静かに問うと、ガッシュはピタリと笑うのを止めた。
金の瞳が病的なまでの暗闇を灯す。
その表情は、今まで見てきたどの顔とも違っていた。
そう、例えるなら




悪魔の微笑





「何がしたい、と?」

見開いた目は狂気。口は何にとも知れぬ笑いに歪んでいた。

「私は何も考えておらぬ」
「嘘だ」

ガッシュの言葉を切り捨てて、ゼオンは冷たい瞳で自分の王を見やった。

「お前は、清麿を縛り付けたいんだろう?」
「ならどうしてワザと清麿に禁書などを見せたのかのぅ」

のらりくらりと逃れるガッシュに、ゼオンはついに柳眉を逆立てた。

「決まっている!!負の感情でさえも、自分が支配したかっただけだ!!」

滅多に現れはしないゼオンの激情。
ガッシュはスッと無表情な顔になった。
そして、感情の見えない声で台詞を吐いた。

「だったら?」
「……!!?」

目を見開くゼオンに、ガッシュは冷たい声で続けた。

「だったらどうだというのだ。お主には何も関係ない。…そうだろう?王佐」
「…!!」

また激情の炎が揺らめくゼオンの瞳に、ガッシュは美しい微笑を向けた。






「そう。…誰にも関係ない」






ガッシュはそう言って、狂気に歪んだ微笑を閃かせた。






清麿には、決して見せない微笑を。












(2006/05/30)
link for : 05/28story

幸せ

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なんでコイツと一緒にいるかなんて分からないけど。




「ふぁ……」
「……眠いのか」

思わず欠伸をした俺を見て、隣にいたデュフォーが小さく呟いた。慌てて開いていた口を押さえ、微苦笑を相手へ向ける。

「い、いや!その、別に…」
「無理しなくてもいい」

相変わらずの無表情な声でそう言われ、申し訳ない気持ちになる。
しかし、喋っていないのも何だか居たたまれなくて、俺は理由を勝ってに話だしていた。

「その……昨日さ、ちょっと調べ物があって眠れなくて…ごめん」

無言の相手の反応が分からなくて、俺は膝をかかえて俯いた。そして、ちらりと隣を目だけで見やる。


人形のように無表情で、綺麗な横顔。


…こんなデュフォーを間近でみて、いつも思う。
何で俺らは一緒にいるんだろうと。

俺らは敵同士。
性格も合わないし、話題も乏しい。
相性は最悪。

…でも、一緒にいる。



今のこの時間がとても不思議な物に思えた。

「……」

何故か、そう思うととても眠くなった。
…何でだろ。
今まで、人前でこんなに眠たくなる事なんてなかったのに。

「……」

我慢しきれずに目をこする俺を、何故だかデュフォーはじっと見つめていた。
何でだろうとそちらを見ると、



いきなり、デュフォーの膝へ頭を押しつけられた




「え…え!!?」

訳が解らず思わず混乱した俺を見下ろし、デュフォーは淡々とした声で呟いた。

「…寝ろ」
「はぁ!!?」

全く意味が解らない。素っ頓狂な声で問い返すと、デュフォーは無表情なままで俺の顔に自分の顔をギリギリまで近づけた。

「動物は安心出来る物の傍にいると眠くなる。お前は俺といると安心するという事だろう」

その言葉について行けず暫しボーっと聞いていたが、ようやく意味が解って、俺は顔が熱くなるのを感じた。



もしかして…
デュフォー、そんな事で……
喜んでくれてるのか?




「だから、寝ろ」

顔を離して、武骨な手が優しく髪を梳く。
顔には出ない優しさが、更なる眠りを誘った。

「ありがと…デュフォー…」

舌っ足らずな自分の声が些か恥ずかしいと思ったが、すぐにその気持ちも薄れ、俺は優しい眠りへと落ちていった。
最後にデュフォーが微笑んだのをうっすらと覚えながら。








なんでコイツと一緒にいるのかは、未だに解らない。
でも、今は思う。




もっと一緒にいたい…と。








(2006/05/31)

交歓

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信じてる。信じてるのに







「ガッ…シュ」
「ん?」

体を這う手を目で追い、シーツを緩く掴んだ。

「清麿…どうかしたのかの?」

首筋に埋めた顔を上げ、ガッシュは此方を見た。美しい橙の瞳が清麿の輪郭を映す。

「…ん……何でも…ない」

腕まで脱がされた儀礼服が重たく感じる。清麿は僅かばかり身をよじった。

「清麿、何だか今日は大人しいの」

クスクスと笑う相手に、自然と笑みが浮かんだ。
だが相変わらず体を弄る手に熱を煽られ、その笑みも次第に艶を帯びた表情に変わって行く。
笑う余裕は、もうどちらにも無かった。

「っん…ふ……ガッシュ…ぅ」
「気持ちよいか?清麿」

掠れた声で囁かれ、それだけで快楽が増した。

「清麿…」

呼ばれ、一度だけでも触れられれば、もう拒否する事は出来なかった。

「清麿…いいかの」
「んっ……訊く、な…っ…ぁっ」

裏返った声のような自分の嬌声に恥じながら、相手を受け入れた。

―少しの痛みとそれを上回る快楽。

体をひきつらせ、ただひたすらその快感に酔った。

「清麿…っ、清…まろ…!」
「ひ、ぁ!…っふ、はっ、っあぁあ!やぁあっ」

酷く揺さぶられ、浮遊感に不安が増す。
愛しい人の背に縋ろうと手を伸ばして…

…その手を、引き戻した。




「ガッ、シュ……ガッシュぅ…!!」

涙が溢れ、シーツに落ちる。
けれど、決して、その背中を抱き締める事は出来なかった。



もう、抱き締める事は…出来なかった。



「ガッシュ…!!」

呼ぶ声も掠れ、心の中で叫んだ音よりも小さく情けなくて。
ただ、快楽と悲しみの狭間で…涙するしか無かった。



(ガッシュ…お前は本当に…俺を……)





愛してくれてるのか





思わず口にしかけて、快楽で言葉を塞いだ。

(もう…考えたくない…何も、考えたくない!!)

あげる声に悲鳴のような叫びを混ぜて、清麿は固く目を閉じた。
シーツを、固く握りしめて……






解らない
もう解らないんだ
愛してるよな
お前は、俺を愛してくれてるよな?

信じてる
信じてるけど
駄目なんだ


あの本を見てしまってから



なぁ
俺は「生贄」なんかじゃないよな
ただの道具なんかじゃ…ないよな?




お願い
そう言って。





涙で濡れる視界に映る愛しい影。

けれど今は





どうしても、その姿を見る事は出来なかった。






(2006/06/01)
link for : 05/30story
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