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サイトでの小話の収納場所です。企画と平行してUPしていきます。
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その一言が言えないんだと言えない

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もう何十年になるだろうか

清麿が時を止められてから



清麿は、そうなってからはあまり人間の時の思い出を話そうとしなくなった。

ただ、今の日を生き、時には私に笑い、いつも怒る。



変わらない、あの日の顔で。



私は変わった。
背も飛躍的に伸び、頭も成長し、清麿の年を追い越した。

国の隅々までを知り、民の声を聞けるまでになった。

今では清麿に誉められる事も格段に増えたのだ。




お前はもう
一人前だな




それを言われる度、私は心臓が凍り付きそうになった。


一人前?
いや、まだまだなのだ。私は清麿がいないと何も出来ないのだからのぅ


そう言って、清麿の嬉しそうな台詞を掻き消すが、鼓動は収まらなかった。





なぜか



それはとうに解っていたのだ。



私が一人前に…
本当の『王』になってしまえば…


清麿は
私の魂を完璧にするために







消されてしまうのだ





イヤだ
イヤなのだ。

清麿がいないくなったら、私はこれからどうすればいいのだ?
どう笑えばいいのだ?


どう……この世界を生きていけばいいのだ……








清麿、お主が本当は苦しんでいる事を解っている
その時を止められた姿が、どんなに苦痛か解っている。
過ぎ去った日々に、どんなに回帰したいかも…解っている





だけど



だけど、その苦しみから解放する事は、したくない
いや、しない。


だって、許してしまえば
許してしまったら





私は
愛するお主を
失ってしまうのだから…








お前はもう
一人前だな







だから、私は決して、完璧にはならない
清麿を苦しめても、清麿を悲しませても、清麿を失ったりはしない
ワザとバカをして、誰にも気付かせたりはしない


…どんなに愚かなのかは、自分が一番しっている。






だから
言わない








お前はもう
一人前だな









その言葉へ返す
肯定の一言を











(2006/05/22)
link for : 05/21story
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アルカトラズ

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この世に、抜け出せない監獄なんてあるのだろうか。




「宰相殿、この暗殺者は如何いたしますか」

臣下に問われ、清麿は跪く臣下の隣にある物体を見た。
その物体は…縄をかけられ、見るも無惨な返り討ちにあった反逆者。

「っ…お前、人間だな!!おい人間、お前も利用されてるだけだ!解ってるんだろ!?だったら今すぐ魔王を討て!!解放を……っ!!」

上げた顔に、何故か見覚えがあった。誰に似ているのか。そう考えて、リオウを思い出した。

(そうか…こいつはリオウの一族の…)

戦いが終わってから、彼ら一族は深く暗い谷へ追放されたと聞いている。
多分、彼はそれを良しとせず、ここへ乗り込んで来たのだろう。
臣下に一撃を受け、気を失った反逆者に、清麿はその瞳を揺らめかせた。


感情のない、虚ろな瞳を。



「…牢獄へ。反逆者は生かしていてはいけない。後日極秘に処刑するように」
「はっ!」

清麿の無慈悲な判決に臣下は当然の如く頷くと、気を失った反逆者を連れて行った。

「……ふぅ…」

疲れた溜息を吐いて、清麿は椅子に腰掛けた。その姿は、まるで過酷な労働を強いられたように疲れを醸し出していた。

「…利用されてる……か」

呟いて、自嘲気味に笑う。

「……解ってるよ」

反逆者に答えを返して、清麿は両手で双眼を覆った。




解っていた。
自分が魔王を[良いように]操るために、操られている事も、魔王をこの城へ縛り付けるために生かされていることも。




「でも、討つなんて…出来ねぇよ」




魔王を殺す
確かに自分には簡単な事だろう。
だけど


「出来ねぇんだよ……」


流れる涙は、自分の弱さへの悔しさと…彼への愛しさ故。





確かに魔王を殺せば自分は自由になれる。死んで楽にもなれる。でも
それは出来なかった。いや、出来る筈がなかった。
何故なら…




彼を愛しているから




彼がいたから、自分は今まで耐えて来られた。彼がいたから自分はこんなに冷酷にもなった。
苦しんだり、泣いたり、だけど笑う事も出来たのだ






この、牢獄のような城の中で…






「ガッシュ…」



例え鍵がそこに有ろうとも
決して抜け出せはしない



「殺すくらいなら……ガッシュがいなくなるくらいなら……」






この牢獄から抜け出せなくてもいい






溢れる涙に、その慟哭にも似た呟きは消された。









(2006/05/25)
link for : 05/22story

青いバラ

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「はい!清麿v」
「何コレ」


渡されたのは、薄紫の花束。



「バラさ!新種らしくてね、ほら青いだろ?だから清麿にプレゼントしようと思って!」

ニコニコと憎たらしいくらい笑顔を撒き散らす相手に、俺は半眼を向けた。

「…で、何で?」

バラに目線を落とす。それは確かにバラの形をしているが、見た事もない花だった。
赤でもピンクでもない。鮮やかな薄紫。
バラであることは変わらないのに、何故か全く異質な物に見えた。

「いやあ、だって清麿はバラが嫌いだろう?」

相変わらずの笑顔でそう言われるが、全く答えになってなくて。
俺はイラつきながらも自分を堪えて問い続けた。

「そう言う意味じゃなくて…なんでこんな珍しい物を…」
「清麿がバラが嫌いだからさ」

二度目の答えに、ついにキレた。思わず怒鳴ろうとする…と、それを手で制された。
一瞬の事で驚いて、何も言えなくなる。

「だからそれを選んだんだ」
「…え?」

フォルゴレの言った意味が解らなくて、俺は首を傾げた。

「私にとって、バラは象徴なんだ。…清麿に言わせれば私は浮気性で信用ないらしいから、だからバラを沢山清麿に送った。私がどれだけ本気か知って欲しかったから」
「フォルゴレ…」
「だけど、清麿はバラ嫌いだろう?」

そのおずおずと問う声に、やっとフォルゴレがいつもバラを持ってくる意味を知った。
…俺は、それにただ驚く事しか出来なかった。

「でも送らなくなったら、私の愛は伝わらなくなってしまう。だから…珍しいバラを渡そうと思ったんだ」




少しでも
この本気を信じてほしくて…




その切ない呟きに、やっとフォルゴレの本当の気持ちを見た気がした。
信じて貰いたいと頑張っていた、切ない気持ちを。

「…迷惑…だったかい?」

いつもは煩いくらいの相手が、泣きそうな声で聞いてきた。
…なんだよ、その情けない顔。


何故か、笑みが浮かんできて。



「…」


自然に口からでた言葉は




「嫌いじゃ、ない」




「え……」
全く、何て顔してんだか
大の男が情けない。
でも





「嫌いじゃないよ」




あんまり情けないから、俺は苦笑して、頬に軽いキスを送ってやった。
…何だよ、その驚いた顔。



「清…麿…」
「その…」





「珍しいバラ、ありがとう」





愛を、有難う。
そう思うより先に、俺はバラと共に抱きしめられた。










(2006/05/26)
    
暗い淵

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満月の夜、誰もいない図書館に





「…誰かいるのか?」

古く大きな扉を開け、ゼオンは中を伺った。中はもう灯りも無く薄暗い。光源が有るとすれば幾つもの窓から差し込む月光だけだった。
高い天井に付かんとする本棚にぎっしりと詰められた本は、その光に緩く照らされている。机も、椅子も、そして…人も。

(…ここにいたのか)

ゼオンはその人影を見て、安堵の溜息を漏らした。
人影は机に伏して、安らかに寝息を立てている。…多分、蔵書を調べている内に疲れてしまったのだろう。
ゼオンは滅多に浮かべる事のない微笑を浮かべ、影…清麿に近づいた。

(全く…あのバカのおかげで大変だな)

我が身と同じ境遇に思わず苦笑が滲む。子供のようなあどけない寝顔は、愛しさを募らせた。

(こんな所で寝て、風邪を引いても知らんぞ…)

そう呟くが、口は緩んでいて。
仕方がないから寝室まで連れて行ってやろうとして……散らかされた本の内容が目に入った。

「…!!」

それは



『宰相の歴史』




「禁書が何故清麿の手に……!!」

有り得ない事態に、体が凍り付いた。




この禁書は図書館の奥に封じられた
『見てはいけない本』
知られてはいけない歴史書なのだ



特に
…宰相には





「まさか……気付き始めて…いるのか」



自分が
どうなるのかを



その瞳を閉じた瞼の奥に、清麿は何をみたのだろうか。
絶望か、疑問か…
運命か。

「…」

自分の宿命を知って、清麿はどう思っただろうか
清麿は…どうするつもりなのか……





「……どちらでも、構いはしない…か」




ゼオンは愛しいものを見て、呟いた。
月光を浴び、その紫水晶の瞳を閃かせて。



その瞳は
目の前の者しか、映っていなかった



「清麿……」



切なげに囁いて、ゼオンは涙の後の残る頬に、そっと口付けた。



「…俺は…誓ったんだ」








全てを敵に回しても
お前を
守る盾になると







「お前が死なないためなら、俺は何でもする」






そう。例え
ガッシュを殺してでも






そのつぶやきだけを残して、ゼオンは禁書だけを持ち去った。







満月の夜誰もいない図書館に


人ならぬ人と
約束





そして、




涙だけが残された。










(2006/05/27)
link for : 05/25story

Repro bation

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最後の希望だけは
捨てたくなかったのに







図書館へきたのは、今度で何回目だろうか。しかしそれは、今は考えるだけ無駄だった。
清麿はそんな事を思いながら、図書館に足を踏み入れた。


「はぁ…全くガッシュの奴……普通法律書を忘れるか?」

溜息を尽きながら、広い図書館を見渡しす。所狭しと並んでいる本棚には、ぎっしりと本が詰められていた。

「えーと…」

一応全ての本棚を探すが、残念ながら法律書は見つからなかった。

「ここにない…となると」

呟いて、清麿は奥を見た。
棚が折り重なって、ここから見ていても暗闇しか見えない。
実際なにがあるのかは、ここからでは解らなかった。

「確か…重要蔵書はあの奥って言ってたな」

実はあの場所までは、まだ行った事がない。そこに何が有るのかは、解らなかった。入ろうとしても、何故かいつも管理人の魔物が止めにくるのだ。
そう、いつもここには清麿を見張るようにその魔物が存在していた。

「でも、今は早く持って行ってやらなきゃな…」

その事への言い知れぬ不安と、暗闇への些かな恐怖が胸を突く。だがそんな事を思っていても、何も始まらない。
清麿は勇気を出して足を踏み出した。



何故か、管理人は見当たらなかった。







暗闇は意外に怖くはなかった。ただ同じように本棚が並び、本が詰められている。
清麿はその本棚に目当ての本がないか、調べながら更に奥に歩いていった。
しかし、あるのは歴史書ばかり。
一向に目当ての本は見つからなかった

「一体どこにあるんだ?」

再度見渡すが、やはり法律書の類は見つからなくて。
これには清麿も困ってしまった。
ここに無いなら、どこにあるのか。
気づけば、足は更に奥へと進んでいた。暗闇がどんどん濃くなっていく。

「……え?」

途端、本棚の道が終わった。
暗闇に茫洋と光る場所が、目の前に急に現れたのだ。



そこには、鎖に封じられた一つの本棚。



幾重にも張られた結界が、「入るな」と黙して命令していた。

「な…なんだよこれ……」

こんな場所があるなど、知らされていなかった。
いや
「知ることは許されなかった」…とでも言うべきだろうか

「………」

もしかして
この場所は……


「俺が知っては…いけない場所なのか?」




清麿の瞳の中で、何かが揺らめいた気がした。






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(2006/05/28)
link for : 05/27story
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